高度不妊治療(ART)
不妊治療にあたり先ずは検査が行われます。検査の進め方は、医師の方針などによって様々ですが、一般的には内診、超音波、採血(ホルモンの値)などの基本検査が行われます。ここでおおよその原因が推定されますが、さらに精密検査を通じて原因を特定していきます。
受診する方の年齢にもよりますが、原因が特定された場合は、それに対する治療を行い、原因が不明の場合はタイミング療法で様子をみることが一般的です。 タイミング療法による妊娠率は、おおよそ半年で低下してくるので、人工授精(AIH)を実施するケースもあります。
人工授精は、頸管粘液が少ない場合や、男性側に問題がある場合などに効果が期待できます。 卵管のつまりや抗精子抗体(精子に対する抵抗反応)がある場合は最初から体外受精(IVF)となりますが、年齢とともに卵巣機能が低下してくるため、35歳以上の場合は最初から体外受精を実施することも少なくありません。通院や投薬、費用面の負担が大きくなります。
◆卵胞の成長を促す場合
(排卵を促進する場合)
・排卵誘発剤
(クロミッドなど)
脳からの卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を促し、卵胞の発育を促進することで排卵を誘発します。月経開始5日目から5日間ほど錠剤を服用します。排卵誘発剤を長期に服用すると、子宮内膜が薄くなったり、経管粘液が減少したりする傾向があります。
・hMG/hCG注射
(尿から生成されたホルモン剤)
排卵誘発剤にあまり効果が見られない場合に使います。hMG(ヒト閉経性腺刺激ホルモン)は卵胞刺激ホルモン(FSH)、hCG(ヒト絨毛性腺刺激ホルモン)は黄体化ホルモン(LH)にそれぞれ類似しており、直接卵巣に働きかけて卵胞の発育を促進します。一般的にはhMGを月経開始後5日目から毎日静脈注射し、卵胞が大きくなってきたらhCGを筋肉注射します。しかしhMG/hCG注射は、卵巣に対する刺激が強く、卵巣が大きく腫れてしまう場合もあります。
・GnRH点鼻薬
(スプレキュアなど)
卵胞は卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌し、黄体は黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌しますが、それぞれは、卵胞に対しては卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体に対しては黄体化ホルモン(LH)が脳下垂体から分泌されることによって刺激・促進されています。さらにこれらの刺激ホルモンの分泌は、脳の視床下部から性腺刺激ホルモン(GnRH)が分泌されることによって活発になります。GnRH点鼻薬は、この性腺刺激ホルモンに働きかけていきます。短期的に使うことで、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌が促進されます。一方長期的に使うと分泌が抑制されるため、卵胞の成長をコントロールしたい場合、卵巣を休ませる場合、子宮筋腫や内膜症の治療にも使われます。
・ホルモン療法
子宮内膜を十分な厚さにするなど、必要に応じて卵胞ホルモン(エストラジオール製剤/エストラーナテープ、プレマリンなど)、黄体ホルモン(プロゲステロン製剤/プロゲステロン坐剤、デュファストンなど)を補充します。
◆卵巣を休ませたい場合
卵巣を休ませるということは、卵巣に負荷をかけないようにすることなので、自然周期に合わせて何もしないことも一つの方法です。しかし卵巣の働きは年齢とともに低下してくるので、休むことによって卵巣の疲労はとれても、今まで以上に働きは上がりにくい状態です。漢方薬などで体調を整えながら、体の力をアップさせていくことが、卵巣を休ませ、さらに働きを上げていくことにつながります。
一方先端医療では、より積極的に卵巣を休ませる方法として、一時的に卵胞の成長を鈍らせ排卵させないようにしていきます。一般的に、ピルの服用や、カウフマン療法がありますが、いずれもホルモンを投与していきます。それによって体内のホルモンが足りていると脳が判断して、卵巣に対する刺激を弱めます。その結果卵巣は休眠し、休むことができるというわけです。通常休んだ後は、FSH(卵胞刺激ホルモン)の値は適正値に近付き、自然な状態で卵胞の成長を始めますが、成長の程度や卵の質に関しては個人差が大きいところです。
ピル・・・卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合成薬(ピソフィア、ドオルトンなど)など