疲労回復には新陳代謝が関係していますが、それを担うものの一つに甲状腺ホルモンがあります。
甲状腺の場所は喉仏の下。そこからの分泌が過剰か不足かで、甲状腺機能亢進症と低下症に大きく分けられます。
前者はバセドウ病に代表される疾病で、基礎代謝が盛んなため、暑がりや痩せ型に多く、動悸や不眠などを伴い、眼球が出っ張ってくるなどの特徴的な症状があります。
一方後者は、橋本病などの甲状腺炎をきっかけとすることが多く、ホルモン不足によって慢性的なだるさや無気力、冷えやむくみ等が出現します。
いずれも首に違和感が現れることも多いですが、何気ない体調不良や更年期症状と類似するため、知らないでいることも少なくありません。
実際の治療は、ホルモン療法などによる経過観察が主流ですが、不定愁訴がつきまとうため、諸症状を緩和していくことが大切になってきます。
漢方では、この亢進・低下を実証・虚証として捉えますが、進行の度合いによって証が複雑に絡み合いますので、対症療法と根治をバランス良く組み合わせます。
「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」「天王補心丹(てんのうほしんたん)」「帰脾湯(きひとう)」「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」等は、炎症や腫れ、基礎体力や免疫調整に働きかける甲状腺に有益な漢方薬の一例です。
甲状腺に対する漢方の治療効果は、新薬に比べると作用は弱いものの、副作用を気にせず全身状態を改善し、また発症しにくい身体を目指せる点で高く評価することができます。