睡眠の質と水分代謝

長野市民新聞
2020.8.22

コラム#154
【睡眠の質と水分代謝】

猛烈な暑さ、当然のことながら水分補給が欠かせませんね。

体の半分以上は水で占められているわけですが、発汗時あるいは高温多湿下においてはしっかり補給するとして、そうでない状況における摂取について考えてみたいと思います。

漢方には「水毒」なる言葉があります。命の水が毒?少し違和感があるかもしれませんが、水も過ぎれば体に負荷がかかるというニュアンスです。

体の状態あるいは体質以上の水分を摂り過ぎると許容オーバーになり、水をさばききれず様々な症状が現れることになります。

胃液は薄まり消化は落ち、腸に送られた水分は便形成の妨げになるだけでなく、水分や栄養の吸収が鈍くなって体力にも大きく影響してきます。さらには泌尿器への負担も心配になるところ。

そしてもう一つ、漢方では“眠り”への影響も見立てていきます。余分な水分が日々のストレスと相まって体内に熱をこもらせ、それが眠っている間に不安を助長し、悪い夢を見るというものです。

「温胆湯(うんたんとう)」は多岐にわたる方剤ですが、イネ科の《竹筎(ちくじょ)》、苦いことで有名な《黄連(おうれん)》、ナツメの種《酸棗仁(さんそうにん)》など、これらは睡眠の質向上に効果的な組み合わせになります。

水分代謝と睡眠を関係づける考えは独特ですが、胃腸を守りながら代謝を維持し、内熱(不安)を収めながら快適な睡眠へと導いていく、この時季そんなアプローチもご紹介しておきます。

失われる水分と補給する水分、バランスはとても難しいですが、工夫しながら無事この暑さを乗りきっていただきたいと思います。