様々な不妊原因

様々な不妊原因

不妊の原因となる疾病をご紹介します。

◆子宮筋腫

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮平滑筋の変性によってできる良性のしこりです。成人女性の4人に1人に何らかの筋腫があるとされており、顕微鏡で確認しないと分からない小さなものであれば、ほとんどの女性にあるだろうと考えられています。

筋腫は女性ホルモン(エストロゲン)の影響で、まわりの正常な筋層を押しのけながら、時間をかけて少しずつ成長していきます。発生する場所は主に子宮の内外で、特に子宮の筋層内にできるケースが多いです。

・筋層内筋腫 子宮筋の中にできる(約70%)
・漿膜下筋腫 子宮の外側にできる(約20%)
・粘膜下筋腫 子宮の内側にできる(約10%)
・頚部筋腫_ 子宮頚部にできる(まれ)

主症状は、月経時の痛みと経血過多です。月経以外にも不正出血や、出血による貧血も起こりやすくなります。筋腫が他の内臓を圧迫し、下腹部のしこり感や圧迫感、便秘や頻尿なども現われやすくなります。

筋腫は、ポリープのような内視鏡でつまめる小さなものから、ソフトボールぐらいの大きなものまで様々です。エストロゲンを抑えるホルモン剤やピルなどを使うこともありますが、副作用が大きいため、症状があまり重くない場合や、年齢的に閉経に近い場合は経過観察で様子を見ることもしばしばです。

また妊娠を希望している場合は、不妊治療と筋腫治療の方向性が逆になるため、筋腫を治療してから不妊治療に入ることもあります。筋腫があまりにも大きい場合は、薬で退小させることはなかなか難しいため、手術なども選択肢に入れる必要があります。

場所、数、大きさにもよりますが、多くの場合、筋腫やポリープがあっても妊娠や出産は可能です。しかし受精卵の着床や、胎児の成長の妨げになる場合も出てきます。妊娠の経過に伴って筋腫も大きくなりやすいので、筋腫が大きな障害になるか否かの確認はきちんとしておくことが大切です。

漢方では、血流の循環を活発にすることで筋腫の退小を図っていきます。3㎝以下の小さな筋腫ならば漢方薬でも十分な治療効果が期待できます。しかしある程度の大きさになってしまった場合は、諸症状の改善に重点を置きながら、筋腫の進行を抑え退小に努めていきます。血流を良くすると出血量も多くなる傾向があるので、貧血に対するケアも行っていきます。

 漢方薬
・桂枝茯苓丸加意以仁
(けいしぶくりょうがんかよくいにん)

・冠元顆粒(かんげんかりゅう)
・田七人参(でんしちにんじん)
・婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
・その他

◆子宮内膜症

子宮内膜症

子宮内膜症というと、子宮内膜が悪いものと勘違いしている方も少なくありません。子宮内膜は、受精卵が着床するために必要な子宮の内側の膜なのです。生理周期において増殖しては剥がれ落ちる(月経)の繰り返しになります。この内膜が子宮の内側だけではなく、子宮筋自体にできたり、卵巣の中などにもできてしまうことを子宮内膜症と言います。

子宮筋にできると内膜が剥がれにくく、卵巣などにできると排出する出口がなくなり、いずれの場合も体に負荷がかかり、強い痛みや張りを引き起こします。

子宮腺筋症・・・子宮筋の奥に及ぶ場合
着床がしにくくなります。無症状の場合も多いですが、月経痛が強くなりやすくなります。

チョコレート脳腫・・・卵巣の中にできる場合
卵巣機能の低下が起こり、卵胞が成長しにくくなり、卵子の質も低下しやすくなります。
卵管にできると排卵されにくくなります。月経以外でも痛みや張りがが起こりやすくなります。

子宮内膜症

 漢方薬
・折衝飲(せっしょういん)

・冠元顆粒(かんげんかりゅう)
・開気丸(かいきがん)
・婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
・その他

◆高プロラクチン血症

プロラクチンは脳から分泌されるホルモンで、 乳汁の分泌を促す働きがあります。産後継続して多く分泌され、それによって授乳が容易になります。一方プロラクチンは排卵を抑制する作用もあり、これによって授乳している間は妊娠できないという体のメカニズムになっています。

ところが、授乳期間でもないのにプロラクチンが多く分泌され、排卵がスムーズにいかないケースがあります。 そのような状態を高プロラクチン血症と言い、不妊の原因の一つになります。授乳期以外のプロラクチンの正常値は15ng/ml以下で、不妊の約30%にみられると言われています。

原因としては、脳の病気や薬の影響など明らかでない場合は、精神的ストレスが影響していると考えられます。イライラ、あせり、不安など、神経を使いすぎるとホルモンバランスが乱れるため、分泌しなくてもいいときに分泌されてしまうということが起きてしまいます。

体質にもよりますが、普段は正常なのに、ちょっとしたストレスで一時的に多く分泌してしまうこともありますので、特に月経から2週間は心をおだやかにして過ごしましょう。

 漢方薬
・加味逍遥散(かみしょうようさん)

・炒麦芽(いりばくが)
・その他

炒麦芽は断乳にも使うことができます。逆に乳汁分泌が少ない場合は、タンポポの若葉やプラセンタ(胎盤)を用います。タンポポの根(蒲公英根)は乳腺炎に用います。スイカズラの花(金銀花)、ゴボウの種(牛蒡子)、ウンシュウミカンの皮(青皮)、シャクヤクの根皮(赤芍)と取り合わせると、痛みや張りに効果的です。

◆黄体機能不全

黄体は、脳からの黄体化ホルモン(LH)の大量分泌し、卵胞が変化することによって、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。 高い体温を維持し、子宮内膜のさらなる肥厚とやわらかさをアップさせていきます。黄体が弱いと着床がうまくいかず、また体温が安定しないため、受精卵を成長させることが難しくなります。黄体が機能しないということは、卵胞の力も弱いということになりますので、生理周期全般を通じて体を温める必要があります。

 漢方薬
・参茸補血丸(さんじょうほけつがん)

・参馬補腎丸(じんばほじんがん)
・婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
・プラセンタ(胎盤)

◆多嚢胞卵巣

卵巣の中にはたくさんの卵細胞があり、毎月いくつかの卵胞が成長します。そのうちの成熟した最良の卵胞から卵子が飛び出してきて排卵されます。ところがたくさんの卵胞ができてしまうと、一つひとつの成長が鈍くなり、どの卵胞も排卵しにくい状態となってしまいます。その結果、多くの卵胞が吸収されないまま卵巣内に残ってしまいます。卵巣自体も硬くなりやすいため、卵胞が堆積しやすくなり、慢性的な排卵障害が起きてきます。

卵細胞を苗木に例えてみましょう。一度にたくさんの苗木を植えると全体的に育ちが悪くなります。適量の苗木を間隔をあけて植えると成長が良くなります。これと同じように、あまりたくさんの卵胞ができてしまうと発育不良が全体に及んでしまいます。

原因としては、やはりホルモンバランスの乱れが考えられます。卵胞成長時、脳から卵胞刺激ホルモン(FSH)が多く分泌されます。卵巣が活発になり、優秀な卵胞のいくつかがそれをいち早くキャッチして成長を始めます。ところが、ここでほとんど分泌されないはずの黄体化ホルモン(LH)が同時に分泌されると、成長を競合する弱められ、卵胞だけが増えることとなってしまいます。またFSHやLHの分泌を促す性腺刺激ホルモン(GnRH)の分泌が多いことも影響します。男性ホルモンの値が大きくなる傾向があります。

 漢方薬
・加味逍遥散(かみしょうようさん)
・冠元顆粒(かんげんかりゅう)
・婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)
・シベリア霊子
・その他

その他(※黄体化非破裂卵胞)

卵胞が黄体に切り替わってもなお卵胞から卵子が排卵されずにいる状態です。黄体化はしているので、体の反応としては排卵したかのように体温が上昇します。多嚢胞卵巣や黄体機能不全と関連があります。