咽喉頭異常感症

長野市民新聞
2021.2.13

コラム#165
【咽喉頭異常感症 のどのつかえ】

のどがつかえる、なにか引っかかっているといった訴えは、問診の中でも多い症状の一つです。

これらは「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう」といって、痰がつまっているわけでもないのに何かしらのどに異常を感じる病態。診察で炎症や粘膜が荒れた状態があればすぐに対処できますが、局部に何の異常もないため、様子見になることが多くなってしまいます。

原因は、交感神経が食道の筋肉を収縮し、慢性的に締めつけることが違和感となって現れるため、不安や焦りなどの精神的ストレスが大きく影響しています。

漢方ではこの様な“のどに何かある”といった感覚を、梅の種が引っかかっている状態に例え「梅核気(ばいかくき)」と呼び、痰の有無に関わらず、のどに起きる特徴的な病症として捉えています。

何れにしても気持ちが塞いだ状態《「気滞(きたい」》では括約筋はゆるまず、痰などの病理産物も生みやすくなるため、精神的な緊張を緩和すること《「理気(りき)」》が改善の第一歩になります。

よく用いられる漢方薬は、この理気と去痰に働きかける「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」。しかし痰を切ることでのど粘膜が乾いてしまうこともあるため、他の症状や全身状態を踏まえて体に合ったものを選ぶことが大切です。

のどに限らず不快な症状が現れた時、原因がはっきりしないことはよくありますが、そんな時こそ深呼吸やちょっとした気分転換をしながら、気軽に漢方で「気」を巡らしていくと、症状をこじらせず早く回復することができます。